日曜日, 2月 08, 2009

ユーザーの正当なニーズ

最近立て続けに、安い物ばかりだがオーディオ製品を幾つか買った。CDプレーヤーとPC用のアクティブスピーカーとの2つがオンキョー製、それとUSBオーディオインターフェースがローランド製、あと1つがソニーのラジオつき携帯カセットプレーヤーで、これはウォークマンとは呼ばれていない。ウォークマンと呼ぶには少しかさばるし、実用本位というか、コスト本位のデザインで材質も高級感が全く無く、もしかすると部品の在庫処理の目的で作っているのではないかとも思える。

何れもカカクコムやアマゾンの口コミ情報を参考にして購入した。カカクコムの口コミ情報を読んでいると面白く、つい予定外に時間を費やしてしまう。アンプやスピーカーやCDプレーヤーなどのユーザーレビューや口コミ情報をみて気づくことはオンキョー製品の評判が高く、口コミ情報も活発であることに気づく。一方オーディオ誌やたとえば「レコード芸術」など雑誌は自分で買うことはまず無いものの、よく立ち読みや何かの機会で入手したりして見る機会があるが、オンキョー製品は無視されていたり、他社よりも軽く扱われていたりすることが多いことも気づいていた。

古い話になるが私が最初にオーディオ器機を買ったとき、アンプとチューナーはオンキヨー製で、スピーカーはデンオン製品だった。初めはその音に満足していたが、だんだんと音の癖が気になりだしてきた。低音に何かゴムまりが弾むような変な弾みがあり、中高音は黄色っぽい色がついているような感じだった。アンプとスピーカーのどちらに原因があるのかが分からないでいたが、その後数年経ってから、もう一組の小さなフルレンジのスピーカーセットをつないだ時になって初めてそれがスピーカーの癖であったことが分かった。どちらかというとアンプの方を疑っていたのだが間違っていた。デンオン製のそのスピーカーはオーディオ雑誌でクラシックの室内楽向きなどと書かれていたものだが、そういうのはあまり宛にならない物だと言うことがよく分かった。もう一つのスピーカーで聴く限り、そのアンプの音は癖がなく自然であった。ただボリュームなどが割とはやくから劣化したような気がしたが、その辺の劣化は次にかった別のメーカーのものも同じようなものだったのでそういった部分は何処でもそんなものかなと思っている。

最近のカカクコムの書き込みを見てもオンキョーのアンプやスピーカーはクセが無く自然でしまった音がするという意見が多い。それといわゆるコストパフォーマンスが高いということ。またオンキョーは広告費を使わないからオーディオ誌の評価が低いのだといった、本当かどうかは知らないが、その種の業界通のような書き込みも結構ある。たぶん本当にそういう事がありそうだと思わせる。逆に批判というより、けなすような書き込みもある。ただそちらの方はその表現から推量するに、意図的で作為的な悪意さえ感じられるようなものがある。そういう書き込み投稿者同士の口論のようなものを読むのも結構おもしろものだが、やはり作為的な書き込みは分かるものである。

最近はオンキョーはパソコン関連の音響機材や部品に力を入れてきており、パソコンメーカーのソーテックを子会社にしたことなどが話題になっている。ソーテックブランドで音楽向けの静音で低価格のパソコンを出したりしているがおおむねユーザーの評判はインターネットで見る限り好意的なものが多い。そういうパソコンのブランドをオンキョーにすれば良いのに、何故ソーテックという印象の悪いブランドを使うのか、といった意見が多い。その種のパソコンや機材、部品の評価も書き込みやユーザーのブログでは高いし、ユーザーでなくPC関係のニュースサイトの記事でも評価は高く、高級オーディオ誌やレコード誌が無視したり避けたりしているのとは対照的である。

正直言って私もオンキョーはユーザーの正当なニーズに対して誠実に対応して製品開発や経営をしていると思う。ユーザーのニーズにも必ず正当とは言えないもの、バブル的なもの、ユーザー自身にとって欺瞞的なニーズとか勝手すぎるようなニーズもあると思うのだが正当なニーズももちろんある。安くて品質の良いものが欲しいというのは勝手ではあるが、しかし正当な当然過ぎるほどのニーズである。とくに財政的に豊ではない大多数の人にとっては正当なニーズである。クセのない自然な音というのも多くの人にとって正当なニーズである。またパソコンで原理的に手軽に高音質の再生ができるのであれば何かと便利であり、正当なニーズになる筈のものである。こういうユーザーの正当で自然なニーズに真剣に応えてきたことが、オンキョーがオーディを不況の中でも敗退することなく、現在も業界内でユーザーから高い支持を得ている理由だろうと思う。もちろんそれだけではなくいわゆる経営戦略もあったのだろうが。

今は、企業間では何かというと生き残りのためにはトップに立たなければならないようなことが言われ、勝ち組か負け組かの2つに1つというようなことばかりが言われる。そのために何が何でも業界トップに立たなければならず、会社を大きくしてゆかなければ敗退するようなことも強迫観念のように言われることもある。しかしそんなことばかりを考えていればユーザーの正当なニーズに対応することが二の次になってしまうこともあるだろう。そして何処もが一位になろうとし、何処もが無理にでも大きくなろうとし、何処もが肥大化し、結局業界全体が過剰供給になってしまう。自動車業界など特にそのように見えてしまう。トヨタの場合、ユーザーの正当なニーズに真剣に応えてきたからこそトップになれたのかも知れない。しかしそれはそれだけにとどめておくことはできなかったのだろうか。そこからシェア争いで他社と闘い、勝つために規模を拡大し、肥大化する必要はなかったのではないだろうか。あるいは競争だから仕方が無かったのだろうか。

ソニーも最近大量リストラで話題になったが、ソニーがこのように巨大企業になったことも今から眺めてみるとバブル的な面があったような気がする。だいたいソニーの製品というのはもともと音響と映像器機に限られていた。あとになってからPCやゲーム機、またカメラなどに参入するようになったが、ついにモーターとか電球とか、多の総合電機メーカーのやっているようなことはやりそうにもない。今更そういう方面に参入しても仕方がないと思うが、しかし世界的に巨大な電機メーカーというのは大抵総合電機メーカーでモーターから、産業機械から、何でもやっている。フィリップスなどもそうだと思うが。べつにそのような総合電機メーカーになる必要もないが、そうであればそれなりの会社の適正な規模というものが有り、大きくなることをむしろ押さえながら成長してきても良かったのではないだろうかと思えてくる。大きくなり過ぎてからリストラするよりはよほどいい。

オンキヨーの場合、現在のようにオーディオ誌や評論家などから軽く扱われるような状況に甘んじているのはむしろ良いことで、もしかすると意図的であるのかも知れないとも思ったりする。大量の宣伝費をつぎ込んで業界トップを目指すというような過剰な努力をしなかったからこそオーディオの不況も乗り切ってこれたのかもしれないと思う。業種や会社の性格、あるいは時代の環境にもよるが、会社を大きくすることとか他社に勝つことを考えずにユーザーの正当なニーズに応えることと製品の品質向上を第一にかんがえるような気風が広がることが大切なことのように思える。

とはいえ現実はそうもゆかないだろうなと思う。


さて、最初に書いたようにオーディを製品は次の様なもので、その結果をまとめると次のようになる。
PC用のアクティブスピーカーは、GX-D90という品番。初めてこれの音を出したとき、小さなスピーカーから大量の低温が出るのに驚いた。ピアノなど、この低音で結構リアルな響きが得られる。小音量で聞くとき、あるいは静かな低音の場合オーケストラ曲の低音も聞ける。しかしある程度音量を上げるとやはりこの低音は可成り不自然で無理なところがある。何しろすぐ目の前で両スピーカーの、1M以内の間に広がる低音だから、高音のソロ楽器とのバランスがどうにも不自然だ。この大きさと値段ではしかたのないことだろう。スーパーウーファーを使える仕様になっているのもそのためかも知れない。低音を両スピーカーの間から外の空間に出せば、多少音量を上げてもバランスが取れるのかも知れない。しかしピアノではこのままの低音でそんなに不自然でもない。このスピーカーは全体にピアノに向いているところがある。しかしオーケストラの低音でもシューベルトのロザムンデ間奏曲(第三)のように静かでふんわりとした低音の場合はそんなに不自然でもなく気持ちよく聞ける。いずれにしろ小音量向きであることは確かで在る。

ローランド製USBオーディオインターフェース、UA-1EX ももちろん安い製品で、他と比較していないからその点はよく分からないが、オンボードの時より音が良くなったことは間違いない。オンボードでもノイズが特に耳につくようなことはなかったが、何となく音が汚れて、濁っていたようなところがあった。それが可成り取れたようだ。PCはデルのビジネスモデルだが、音は可成り静かで、机の下に置いている。以前はソフマップ製の牛丼パソコンというのを使っていたが、ファンの音は安物の扇風機並みで、それはひどかった。

CDプレヤーは、これもオンキョーの低価格製品でC-705FX。これは、今はPCではなく以前のアンプとスピーカーで使っている。以前のCDプレーヤーが壊れてから久しくCDは聞いていなかったが、以前の音と比較できるくらいには音を覚えているCDはある。アンプは特に劣化しているが、それでも以前と比較して合唱曲など、以前のCDで聞き分けられなかったパートなども聞こえるようになったから、これもなかなか性能は良いのだろうと思う。とくに合唱曲の男声パートなど、よく聞こえるようになった。

ソニーのラジオカセットプレーヤーはWM-FX202という製品で、冒頭に書いたように、ウォークマンタイプだが、ウォークマンとしては売っていない。カセットデッキのパーツの在庫処理が目的ではないだろうかと思える。デッキの品質は、回転むらが全く感じられず、良いものだと思う。ラジオはコンクリート五階の室内では殆ど入らない。カセットデッキも従来のものが壊れて久しく聞いていなかったのだが、過去の録音をPCに保存しようと思ってこれを購入した。しかし、残念な事に、ドルビーシステムがついていない。過去の録音の多くはドルビーシステムを使っていただけに、これだけが残念だ。

比較に使ったCDの主なものは次のようなもの。
◆シューベルト、ロザムンデ全曲、クルト・マズア指揮、フィリップス。これはCD1枚すべてがロザムンデの音楽で、エリー・アメリングの歌や、混声合唱、男声合唱なども入り、未完成交響曲の最終楽章になる筈だったという説もある間奏曲なども入っている。大切にしているCDの1枚。
◆ブラームス、(無伴奏)合唱名曲選、「マリアの歌他」、ミシェル・コルボ指揮、エラート。
◆ブラームス、合唱曲集、ジョン・エリオット・ガーディナー指揮、フィリップス。これは2台ピアノ伴奏の「愛の歌」とか、ハープとホルンの伴奏による4っつの女声合唱曲などが入っている。ハープとホルンの伴奏は本当に心にしみ通るような音で、この曲でしか聞けない組合せである。