水曜日, 5月 11, 2022

ゲーテが飲んだアルカリ性の味がする塩類―重曹か?

 最近よくUチューブ動画で重炭酸ナトリウムとクエン酸の健康効果を謳う動画を見る。肯定的な経験談が多いので試してみることにした。

ところで、思い出したことがあって確かめてみた。それは去年から読み始めたゲーテの『詩と真実』にそれらしきものについて書かれていたことである。次に潮出版社刊、山崎章甫訳から引用してみる。ゲーテが神秘主義や錬金術の研究をしていた若いころの話である。

「私ははげしい不安を感じて、生命の危険をおそれ、どんな医薬ももはや効果をあげえないように思えた。こんな危急の場合に不安でたまらなくなった母は、当惑する医者にむかって、あの万能薬をもってきてくれるように激しく迫った。医者は長いあいだ反対したあとで、深夜自分の家にとってかえし、結晶して乾燥している塩類を入れた小さなコップを持ってきた。そして、これを水に溶かして病人の私に飲ませたが、この水ははっきりアルカリ性の味がした。この塩類を服用するとすぐさま私の容態は軽くなって、病勢は次第に快方に向かった。この事実が私の医者に対する信用と、このような霊薬をともどもに所有しようとする努力とをどんなに強め、かつ高めたかはいうまでもない。」

ちなみに病状の原因は「首にできた腫れもの」と書かれている。

(以下12日追記)

「首にできた腫物」を簡単にネット検索で調べてみた。部位や性質を合わせて様々な病気が挙げられている。ゲーテの腫物の正体についてはこれだけで知る由もないが、検索で紹介さてている中には咽頭がんの一種で、ごく若い時期に発症するようなものもある。ゲーテの場合はまだ若いころで、病状も相当に深刻であったことから推して、がんの一種であった可能性も考えられるのではないかな。もしそうだとすれば、重炭酸ナトリウムがガンの治療に使えるという、最近、一部で話題の説は、もしゲーテが飲んだものが重曹であったとすればの話だが、すでにゲーテの治療で効果が立証されていたことになる。ゲーテの生涯におけるいろいろな挿話はよく語られていると思われ、有名で良く語られるいくつかのエピソードは私も知っている。簡単な伝記も読んだ記憶があるが、これほど深刻な病気にかかったことは、この有名な自伝を読むまで全く知らなかった。この日本語訳には注釈がたくさんついているが、この箇所には何の注釈もなかったことを思うと、この点についてはゲーテの研究者にもまだ興味の対象になっていないのだろうか?もっとも刊行年は1980年ではあるけれども。