木曜日, 4月 07, 2011

稲恭宏博士の講演をUチューブで聞き、考えたこと

話題の稲恭宏博士の講演をUチューブで拝見しました。
http://youtu.be/PQcgw9CDYO8

ツイッターでは非難する人が多いので一体どういう人なのだろうと思っていたところ、某ブログで推奨されていたので、そのリンク(上記)から博士の講演を見せてもらった。


強い印象を受けたが、かなり長い講演で色々な発言を含んでいるので、全部整理して素人が総合的に判断することは難しいが、とりあえず箇条書きで印象と問題点等をメモしておきたいと思う。

◆ 一言で言えば、問題になるのは線量率だけで、蓄積線量は問題にならないということのようだ。そしてその線量率も基準の千倍程度まではむしろ健康に良いということだがその根拠には、少なくとも害にならないということの根拠には、―データが正しいとすれば―確かに納得できるものがある。確かに自然界の放射線レベルには場所によって差があることは常識的にもわかる。しかしそれが実際にはどの程度なのだろうか、またこの点で稲博士のデータと根拠は正しいのだろうかと、ネットで調べてみると次のウェブページが見つかった。ページタイトルは「自然放射線の高い地域のガンは多くない」:http://www.iips.co.jp/rah/kangae/lowdose/sizen_s.htm
このページを見ると、なるほど、自然放射線のレベルが普通の地域の3倍と言われる中国広東省陽江県のデータではむしろレベルが高いほうがガンの死亡率が低くなっている。
このページのトップページに移行すると、「放射線と健康を考える会」という団体のサイトでありhttp://www.iips.co.jp/rah/index.htm メンバーには原子力関係者も含まれているみたいだが、どちらかというと医学系の専門家が多いようで、結構多様なメンバーに思われる。
リンクサイトには東京電力も含まれるが、医学研究系の団体が多い。いずれにせよ、こういう団体や人物のことは素人には分からないが、色々と興味深い情報が公開されている。
いずれにせよ、先の中国広東省のデータが本当だとすれば、少なくとも通常、自然の3倍の強度(線量率)の放射線を継続的に浴び続けていればむしろガンで死亡するリスクは低下するといっても良さそうである。

あるサイトには、イランのラムサールの様に平均の20倍の強度の場所が紹介されている。しかし稲博士は平均の数千倍の地域もあるという。たしかにウラン鉱山とか自然界は多様だからそういう所もあるのだろう。でも健康データがすべて出ているとは言えないだろう。もちろん、データがないということとリスクが高いということが同じである訳でもない。ただ解っていないというだけだろう。本当に数千倍の地域で住み続けている人々がいて安全なデータが出ているとすれば、完璧に稲博士の主張は正しいことになる。そうでなくとも逆のデータが出ていないとすればどちらとも言えないことになる。

さらにネットで調べると、(財)高度情報科学技術研究機構というところのサイトにガラパリというブラジルのウラン鉱山地方のデータが紹介されている。それによると染色体の異常は対照地域の1.3倍だそうだが、「しかしながら、エスピリト・サント州の夫婦8000組とその妊娠終結(生・死・流産)44,000回について、産児の性比、先天性異常、流産、死産、乳児
死亡、生殖能(受胎率、出産率)を調べた結果によると、対照群と比較して、「良い」影響も「悪い」影響も認められなかった。」という報告が出ている。残念ながら、ガンの調査はされていないようだ。この地域の線量率の分布グラフがあって、それによると平均で日本平均の10倍くらい、最高で40倍くらいになっている。千倍とはまだかなり開きがある。


稲博士は現在の基準はチェルノブイリのデータを外挿したデータによることが間違いであると言っている。外挿したということは原点をゼロと仮定した直線または曲線ということになる。たしかに、外挿ということは実際のデータの基づいたわけではないのだから、これは単なる推定に過ぎないというのは分かる。この点で上記のような自然放射線の強い地域の住民のデータが出ているとすれば、それを考慮に入れた曲線にしなければならないのは確かに当然である。

以上から、稲博士の基本的な考え方自体は間違っていないと思う。あとはデータ次第だろう。上の中国広東省のデータが正しいとすれば少なくとも世界平均の3倍までの位置までは外挿曲線を修正しなければならないとは言える。またカラバリのデータが使えるのであれば10倍程度までは修正しなければならなくなる。

◆ 現在までのニュースによると、原子炉の炉心が一部溶融して圧力容器や格納容器が損傷していることは間違いがないようだが、稲博士は圧力容器は壊れていないと発言しているのが気になった。

◆ 原発の全般的な危険性についてはあまり触れていない。でこの点でも博士の考え方を述べて欲しかった。医学者であって原発の専門家ではないので、これは仕方ないのかもしれない。使用済み燃料を地下に埋める事の危険性について触れていたが、すこし物足りない気がした。

◆ チェルノブイリで子供の甲状腺癌が発生したことについては食べ物にヨウ素成分が少ないという、チェルノブイリでの地域的な特殊性によるところが大きいとしている。これは理解できるが、ヨウ素以外にこのような特殊性は他にもないのかどうかが気にかかる。


これまでの結論:単純に線量率から言えば、少なくとも今の自然放射線の10倍くらいまでの線量率なら本当に問題ないのかもしれないと思う。もっと稲博士の研究を知ることで、信頼度が上がるかもしれない。ビデオ中の稲博士の印象からも、個人的には、10倍以上でも大丈夫かもしれないと思うが、数千倍となると、不安があるといったところだろうか。いずれにしても稲博士のこの発表は一定の安心材料であると言っても良いと思う。体内被曝については今のところ、そこ迄まで納得出来ていない。

稲博士にはTVなどで他の諸先生方と議論してもらいたいものだと思う。これはメディアの意向次第だろう。


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